2025年1月15日

【Report】「住みかをつくる〜自然とつながる家づくりの学校」vol0.木の伐採と製材所の見学

今年は、世田谷区大蔵で展開中の『三年鳴かず飛ばず』プロジェクトの小屋づくり計画と連動して、「住みかをつくる〜自然とつながる家づくりの学校」をシリーズで展開予定です。家づくりのさまざまな現場や素材、ワークショップを通じて、地域やその気候風土に寄り添った家づくりをみなさんに体感していただく機会を多く作りたいと思っています。

そのプレ企画Vol.0として、さる1月11日に家づくりの第一走者である山の木について学ぶべく「木の伐採と製材所の見学」を開催しました。埼玉/飯能の山に入り伐採現場を見学、山の仕事について西川ラフターズの若林さんからお話をうかがい、製材所や貯木場を見学し木材の流通を学びました。引き続き、多様なプログラムを催していきます。

◎「住みかをつくる~自然とつながる家づくりの学校」についてhttps://bioform.jp/project/sumikawotukuru 

飯能の森。市の面積の65%が森林、その80%が人工林、そのうち9割ほどがスギ、ヒノキ、サワラなどの針葉樹。
西川ラフターズの若林さんから、山の仕事についてお話をうかがいました。
木の伐採の様子を見学しました。伐る時期は9月のお彼岸から2月の立春までが適宜だそうです。
通常40-80年で伐採するが、数本は残して100年、200年の大径木に育てる「立て木」という育成方法
伐採した木はチェーンソーとプロセッサーで3-4mに玉切りし、製材所に運びます。
製材所の見学@大河原木材。江戸時代、川から筏で江戸へ流送されていた飯能の上質な木材を、江戸の西の川からくる木材という意味で「西川材」と呼ぶようになったそうです。
樹皮を機械で剥ぎ、丸太を製材機で柱材、板材に切り分けます。
丸太の約5-6割が建材となり、以外はチップ化してバイオマス発電に利用したり、大河原木材さんではペレット事業も行っているそうです。
昨今では野地板の合板化で板材の需要が減り歩留まりが低下。設計者にもこの状況を理解してもらいうまく活用してほしいとのことでした。
乾燥についてうかがいました。含水率を20%程度にして出荷。本来、質や風合いや強度など木の特徴が最大限生かされるのは天然乾燥だが、現在はコスト、スピード重視から90℃~120℃の高温で機械で乾燥させる高温乾燥が9割を占めるそうです。
ランチ@kinoca 林業社のフォレスト萩原さんが兼業で営む雑貨&カフェです。「木の良さをもっと知ってほしい、触れてほしい」という思いから始まった西川材のアンテナショップです。木組みの美しい空間で、素材にこだわりオーガニック調味料で仕上げたランチをいただきました。
貯木市場@吾野原木センター。買い手がスムーズに購入できるよう、木の種類や品質ごとに原木を選別し積上げて並べています。飯能には4つの市場があるそうです。

良質な木材の特徴は、年輪が詰まっているか、適切に枝打ちされているか、曲がりの少なさ、傷や穴、腐れの少なさだそうです。西川材は目が詰まっていてよい色の材がでるとのことでした。
価格は目安でヒノキ1-2万円/㎥、スギ8000円~1.5万円/㎥程度だそうです。
お疲れ様でした!西川ラフターズの若林さん、ガイドをありがとうございました!

山が抱える課題は、需要減や価格低迷、人手不足、獣害など多岐にわたり、特に伐採から原木市場に至るまでの一連の流れにおいて、「質の良い木を育てても、高値で売れにくい」「乾燥や枝打ちの作業負担が大きい」など、山側の努力が十分に報われにくい構造が続いている点が深刻だということを知りました。

一方で、地域を守るために伐採を続けている林業者もあり、立て木を残して大径木を育てるといった工夫も進んでいると聞きました。さらに、天然乾燥材の価値を評価してくれる建築現場が増えれば、良い材を育て丁寧に使うサイクルが実現し、地域の森林や林業が持続可能となっていく可能性があるということもわかりました。

建築に携わる者として、また消費者として、良いサイクルがまわるような役割を果たせるとよいなと思います。