2025年10月15日

【Report】「住みかをつくる〜自然とつながる家づくりの学校」vol4.「だるま窯 いぶし瓦」

「住みかをつくる~自然とつながる家づくりの学校」第4回目は、竹・木・畳と続き、「瓦」について学びます。今回は群馬県藤岡市の「達磨窯煉瓦工房・共和建材」代表の瓦職人、五十嵐さんの工房の見学・解説という特別な機会をいただきました。

主に屋根材として飛鳥時代の寺社仏閣に始まり、城、民家と伝統的な日本建築とは切っても切り離せない存在の瓦。そんな1,000年以上の歴史をもつ建材も、他の工業製品に代わられ出番が少なくなってしまった昨今、原料の土を練る、土の成形・乾燥、瓦の焼成とすべての工程を手作業で行う五十嵐さん。手作業ならではのご経験・感覚など生の声を通して、伝統的な「だるま窯」および「藤岡瓦」の歴史、製法、性能についてお話をうかがいました。

〇藤岡瓦、藤岡市の歴史
かつての群馬県藤岡市には60軒もだるま窯をもつ瓦屋が存在しました。五十嵐さんいわく、空が窯から出る煙で黒く染まっていたこともあり、瓦産業が活発だったことを物語っています。

〇藤岡市、藤岡瓦の現状
藤岡市内の瓦屋も高齢化、職人さんの引退に伴い年々減少し、現在だるま窯が稼働するのは共和建材、五十嵐さんのみに。そんな貴重なだるま窯の中を見学させていただきました。薪を燃やして火を入れ、徐々に温度を上げていき、窯内の温度が約1000℃に達したら仕上がり。一晩中火加減をみながら作業をし、朝一番に窯を密封し煙で燻して、ようやっと美しいいぶし瓦ができるという一連の工程を手作業でされてます。内部はすすで真っ黒。

〇粘土について
瓦に必要な土もただ水を足して練るだけではありません。川由来の砂っぽい土と、山由来の粘り気の強い土を足して練ります。五十嵐さんは使う土の質を見極め、ご自身の経験からその都度土の配分を変えていきます。“シャモット”(砕いた瓦)を混ぜることも。混ぜることで耐火度が上がり、芯まで火が通ることで強い瓦が焼きあがります。

〇瓦の性能と暮らし
だるま窯でじっくり焼き上げた「いぶし瓦」は高い吸水性があります。雨の際は水を保ち、乾いたり高温の時には吐き出すことができます。濡らしてみると表面がジワーッと乾く反面、ずっしりと重さを感じます。(動画①)

〇瓦の色と機能
吸水・保水性があるのは燻した煙のすす(炭素)が定着した黒い瓦。赤い瓦はその赤い色が酸化反応が進んだ証拠で、燻した黒い瓦より保水性は低くもろくなります。

〇焼成前の成形
練った土を焼く前に乾かします。土は水が抜けて乾くと縮みます。それも見越して五十嵐さんの経験を基に少し土を反らせてから乾かします。乾燥に失敗した土は干物に似ているので“イカ”と呼ばれるそうです。(動画②)

〇瓦の良し悪し
良い瓦は甲高い金属のような音がするそうです。ただ音の鈍い悪い瓦も捨てず、シャモットにし瓦に練ったり、吸水・調湿性を活かして庭先・床下に撒いて水分や湿度のコントロールなどに再利用します。(動画③)

〇鬼瓦
鬼さんともこんにちは。目が合うと怖いですが、元は鍾馗(しょうき)さんという中国の人物がモデル。強さを誇った鍾馗さんが、災いや邪気からお家を守ってくれますようにとおまじないがかけられています。

最後は実際に使用されてる様子を見学。瓦を上下左右から眺められるなかなかない貴重な機会です。

加えて工房のお隣の五十嵐さんの娘さんの外観も見学させていただきました。よーく見ると屋根、棟の上には鳩の置物が。鳩+棟=鳩胸と洒落を効かせているんだとか。家づくりも遊び心があるとより楽しいですね。

玄関にも敷き瓦がふんだんに使われていました。よくみると傘立ても瓦に。吸水性が役に立ち、濡れたまま入れてもすぐに床や地面に染み出ないので便利だそうです。

暮らしに身近なその土地の土や水から作られ、手作業ゆえに一枚一枚が一品物の藤岡瓦。

普段何げなく見ている瓦の歴史や風土性、また何からどのように作られているのか、その過程を見ることができ、目からうろこの体験でした。それとともに、作り手の知恵や技を連綿と継いでらっしゃる五十嵐さんのお仕事ぶりは、尊敬の念に堪えません。私たちにできることは、伝統を絶やすことなく、使い続けることなんだなと改めて感じた日でもありました。