【new】祖師谷大蔵/「三年鳴かず飛ばず」長屋
東京都世田谷区大蔵地区。仙川と野川に挟まれ、国分寺崖線の緑地帯が広がる場所にできた、子育て世代向けの賃貸シェアハウス「長屋プロジェクト」です。
かつてこの場所は、大家さんの実家、賃貸アパートと畑があり、まちの人が自然と集う場所でした。都市計画道路により土地が二つに分断されることになったことをきっかけに、この場所が持つ「人が集う記憶」を未来につなぐ暮らしの場として、「三年鳴かず飛ばず」プロジェクトがスタートしました。
2023年夏に竣工した、住宅とコミュニティスペースからなる「マザーハウス」と、小さな賃貸住宅「小屋」に続き、2025年夏に「長屋」が竣工しました。長屋プロジェクトでは、親だけではなく地域で子育てができ、子供が成長過程で多様な大人に出会える豊かな場となることを構想しています。2026年春には「小屋」に隣接して「小屋2」が竣工の予定です。
ゆるやかにつながる建築構成
1層目は、大家さんのセカンドハウス兼、賃貸の住人も使えるコモン的な空間。道路に面して大きく開き、まちに賑わいが溢れ出すことを意図しました。大家さんの実家として、また住民同士の交流を深める場として機能します。
2・3層目はメゾネット形式の3世帯賃貸住宅。各住戸は玄関が分かれているものの、共有バルコニーがあり、距離感を保ちつつも暮らしがつながるように工夫しています。大きく開けた窓は、南北の景色をつなぎ意識を外へ誘います。
暮らしをシェアする豊かさ
各住戸の水回りや収納などは適度に抑え、1層目のコモンに大きなキッチンやお風呂・収納室等を設け、住民同士でシェアできるようにしています。これにより住戸面積を抑えながらも、豊かな暮らしを実現することができます。また、コモンは太陽光発電と太陽熱温水器、薪ストーブによるエネルギー自給により、災害時にも明るく温かい空間を維持できる防災拠点としての役割も果たします。
パッシブデザイン
敷地北側に川があり、地形的に谷間の地形的条件から南西からの風がよく吹きます。建物の南北に設けた大きな開口部は自然通風を、屋根面にある越屋根は、重力換気により効果的に換気を促します。
国分寺崖線と一体化するランドスケープ
植栽は、敷地から見える国分寺崖線と景色が繋がるように計画し、雑木林の樹種を基本に構成。道路側には実や花のなる木を植え、子どもたちが土や植物に触れる遊びの場となり、道ゆく人の目を潤し交流のきっかけとなる場となることを狙っています。まちといえの接点、公共私の境界を曖昧にすることで、緑が地域に溢れ出しまちを豊かにすることを目指します。
記憶を引き継ぎ、地域とともに育つ
旧実家の解体で出た建材は、丁寧に保存し、仏間の欄間や雪見障子・古ガラス、古梁のベンチなどに再利用。また建設過程では上棟式や完成おひろめ会を開催し、関係者や地域の方など100人を超える人が訪れ、過去にこの場所にあった実家に人々が集まる景色を彷彿とさせる光景が広がりました。
竣工後も、住人が住まい多くの人が関わる中で、この場所が持っている「まちの人が集う記憶」を未来へつなぐ役割を果たすことを期待しています。











