陸前高田発酵パーク「CAMOCY」
様々な人やもの、ことが繋がり発酵し続ける建築と場づくり
岩手県陸前高田市に発酵をテーマにした商業施設「発酵パーク CAMOCY」がオープンしました。東日本大震災により街全体の99%がなくなった陸前高田市を、「発酵」をテーマに再生し賑わいを取り戻そうという「CAMOCYプロジェクト」の一環です。味噌、醤油、チョコレート工房、発酵食堂、クラフトビール、パン屋など七つの店舗や、フードコートやキッチンスタジオが配置されています。
復興の象徴として、「人も暮らしも徐々に発酵していく」をテーマに、地域が元気になる施設づくりを目指しました。
◎蔵の並ぶかつての風景を再生
震災前の街並みをファサードデザインに反映しました。連続する蔵屋根の風景が復興後の街並みのよきアイコンになり、かつての風情を取り戻す一助になればと思います。
◎地元の木材と作り手による地産地消の建築
構造は木造とし、内外装、家具にとふんだんに地元の杉や松を使いました。木材を山から切り出し地元の製材所にて製材し、地元の大工や職人が腕をふるいました。かつて気仙大工として活躍した歴史を持つこの地ならではの技術と産業を改めて育んでいくことを大切にしたいと考えます。
◎発酵する家具で広がった地域とのつながり
店舗什器は、地域の木材屋さん、鉄工所さん、職人さんと協働して開発しました。主材は赤身のきれいな気仙杉、スツールの背になる材は山林に自生している広葉樹の小径木丸太。丸太の皮むきは手作業で一つ一つ丁寧に剥いていただきました。多くの作り手同士の対話を通して実現した“発酵家具”は、地域の材料と人の手をつなぐ役割を担いました。
◎伝統素材と現在の技術の融合
発酵は時間をかけてゆっくり進むものです。この施設も地域に根ざし時間性を内包するようなものにしたいと考え、素材類は瓦や杉の板張りとして伝統的な建物の風情を醸しつつ、架構形式はトラス構造、天窓やガラスなど現代技術を活用し、次の時代へつないでいくようなデザインとしました。また、震災前の記憶を継ぐため津波の後から救われた石畳を外構で再利用しています。
◎環境に配慮した建築、エネルギーの地産地消へ
建物全体の断熱性能を高く確保し、冷暖房の省エネ性を確保しています。天井には天窓を連ね、昼間の採光を十分確保することで照明の負荷を低減しています。天窓は自然通風を促し電動による機械的な換気に頼らなくてもいい仕掛けとしています。暖房は、地域の木質資源を活用しようと、薪ストーブを導入しました。地域電力会社である「陸前高田しみんエネルギー」が電力とともに薪も供給します。また場内駐車場の上に太陽光発電装置を設置し、エネルギーも地産地消で賄っています。