ちっちゃい辻堂 久根下
100年先の辻堂を想像して、その最小単位をつくる
神奈川県藤沢市辻堂。“ゆるやかに集まってつくる土と繋がった暮らし”をコンセプトに、住民が適度な距離感を保ちつつ、互いの暮らしの気配を感じられることに配慮した4棟の戸建て賃貸住宅。畑、食べられる果樹があり、井戸、雨水タンクがあり、堆肥場があり、コミュニティがある。人が住まうことで環境も良くなり、人と自然、人と人との関係性も、いい形で育まれる在り方って何だろうと探って行った先の一つの形だ。
◎お互いが余白の中にいられる距離感
3棟の平屋と2階建て1棟が寄せ集まり、その中心にはコモンスペースがある。各住戸とも、コモンスペース側に土間キッチン・玄関があり家庭菜園で育てた野菜をそのまま持ち込めたり、キッチン越しにコモンスペースで遊ぶ子供を見守れたり、自然と声を掛け合えるような関係が生まれることを意図した。大きな窓を設け、外に開きつつも配棟をずらし、窓の位置を調整し、植栽により互いの距離感に配慮した。コモンスペースは互いの生活がまじりあう結節点であり、距離を確保する余白の空間でもある。
◎時間が経てば経つほど心地よくなってゆく場所
自然素材で環境にも人にも負担をかけず心地よい住まい。木の家は時間を経るごとに劣化でなく美しく変わる。点である小住宅がまちに開き、じわじわ広がりだんだんまちがよくなる在り方、100年先にあって欲しい風景のモデルを目指した。大家さんの所有する周辺一帯の土地や建物とも有機的につながっている。また、地域の多様な仲間、資源と連関する仕組みを目指している。
◎土と繋がる暮らし
各棟に家庭菜園、広い土間空間、土との接点になるデッキを配置し、農のある暮らしへ誘う設計とし
た。通路には果樹を植え、食べられる庭となる。駐車場や敷地内通路は、土地を健やかにする微生物
舗装、剪定枝をウッドチップにして舗装に使い、放置竹林を整備しながら作った竹炭で大地を整え
る。雨水は敷地内に涵養させる機能をもたせ、水は気化熱で風が生まれる。
(外構、ランドスケープデザイン:クロマツプロジェクト)
◎心地よい暮らしをたすける環境装置
空調機器への依存を軽減し、体感の心地よさを得られる、太陽熱集熱装置「そよ風」を採用。各棟ペレットストーブを置けるような対応もしている。