「三年鳴かず飛ばず」 マザーハウス・小屋
東京都世田谷区大蔵地区での「三年鳴かず飛ばず」プロジェクト。当プロジェクトは、もともと大家さんのご実家、賃貸アパートと畑があり町の人が集う場所だった土地が、都市計画道路により分断されることをきっかけに始まりました。二分された敷地には、「100年後も残る風景」をコンセプトとした長屋プロジェクトと、「世代に合わせて変化する風景」をコンセプトとした小屋プロジェクトが進行中です。今回は、住宅とコミュニティスペースからなるマザーハウスと、小さな賃貸住宅、小屋の1棟目が竣工しました。
<マザーハウス>
◎暮らしをシェアする空間構成
まちのお母さん的存在の方が住まい、1階のキッチンスペースは、まちの人や子どもたちが集いやすい場所となるように、賃貸住宅でありながら、住まい手も含めて設計段階から打ち合わせを重ねました。共有のトイレや風呂を設け、隣接する小屋側の住民も使えるシェアスペースとしても機能します。2階は、住人のプライベートスペースです。空間を広く利用するため、蕪束により柱のない空間を実現しました。
◎これまでの記憶をつなぐ
建物の各所には、大家さんのご実家を解体した際に取っておいたものを再利用しています。
主屋根のほぼすべての瓦は、再利用の瓦を使用し、外土間の一部は、瓦を砕き洗い出し仕上げとしています。キッチンの横のステンドガラスにはご実家の古ガラスを再利用。住まい手が描いた原画をもとに、お知り合いの作家さんにより作成されました。趣のある古ガラスは、建具上部の欄間にも再利用しています。その他、建具や雨樋も再利用し、カウンターは街路樹の松の木で作りました。
<小屋>
◎小さく豊かな暮らしの構成
隣接する「マザーハウス」の広いキッチンやお風呂をシェアできることで、「小屋型の賃貸住宅」は最小限のスペースにしています。目の前に広がる畑で野菜を育て、皆と共に食事ができ、狭小アパートと同じ部屋面積でも豊かな暮らしができるように計画しました。
◎撤退/環境を考える
世代に合わせて変化する風景を目指し、撤退しやすいことを考えました。将来的に畑に戻すことがあったときに、容易にできるよう、基礎はコンクリートによるベタ基礎とせず、石場建てとしました。浮き床となることで、設備のメンテナンス性が高いことも特徴です。また、移動性・創作性・伸縮性を考慮し、建物を3ユニットにより構成しました。今回は工務店さんに施工いただきましたが、今後はセルフビルドでも建てられることを視野にいれています。そのため、柱などの部材は一人でも持ち運ぶことができるように60mm角で構成しています。
<マザーハウス>
<小屋>