農園スクール・カフェ・エコショップ「LEAF」・温室@愛知県安城市
愛知県安城市にて、従前は田んぼとして利用されていた農地の一部に、農地転用を行い、食育や有機農業を啓発する施設として、木造の飲食店と木造の温室、市民農園を一体的に整備した。
本施設は、体験農園として、農作業に加え、食育、環境活動、地域コミュニティづくりなど、様々な体験ができる農園である。それら多様なプログラムに対応できるように、建築はシンプルな大空間とし、農園やまちに対して開放的でそれぞれの活動が内外にあふれ出し繋がるような設計とした。
農村風景にふさわしい建築のあり方を模索し、地場の木材や地場の土で焼成された煉瓦や瓦で建築を組立てている。木造の飲食店(建築物)は、木造の温室(非建築物)の木構造の組み方を踏襲し、畜舎に見られる木のフレームが連続する仕立てとした。
室内は、木の質感を存分に感じられるおおらかな空間の中に、小さな箱状のキッチンや水回りの機能がぽつんと置かれた仕立てで、南西に広がる農村風景や、光や風を目一杯取り込む設計とした。
◎建築意匠・構造・環境設備の連動
飲食棟の屋根架構は二種類の勾配を用いた切妻で、頂部からの採光や重力換気を促す環境装置としても機能する様に、意匠・構造・環境計画が連動する空間作りとした。
妻手方向の耐力は、端部の面材耐力壁の他、ボルト接合による簡易に組み立てられる頬杖と、屋根型を兼用する挟み梁を補足的に活用し、木パネル材で水平剛性を高めた。長手方向は南北の抜け感を確保するため、鋼製の筋交いを方筋ダブル使いとして、開放感のある仕立てとした。
温熱環境については、想定される利用が主に昼間となるため、壁面を増やして断熱性能を高めることよりも、自然の光や風を有効に利用することの方が、冷暖房負荷の低減と心地よい空間の創出につながると考えた。また、換気用の排気は室外機のチャンバー経由として排熱回収を行っている。木造の構造躯体と連動した環境計画がそのまま建築意匠となることを軸に設計している。
◎建築と家具の連動
当プロジェクトでは、建屋の融通無碍な更新性を確保するために、厨房やトイレなどの空間を構造とは分離して設置している。家具や店舗什器の設計、制作も一体的に行った。屋根の水平剛性として用いた木パネル材の余剰分を、各所に設置される造作家具の他、カフェテーブルの素材としても活用している。農園スクールとして学びの場にもなるとのことで、学校の机のように丸みを帯びた優しい風合いのデザインとした。
家具のロングライフをめざしリユースという観点も取り入れた。椅子は、とある大学の図書館で利用されていたものの座面のファブリックの色調を床材の煉瓦の色と揃え、一体感のある空間とすることができた。また、アフタースクールとして小学生にも利用されるとのことで、一部の椅子は小ぶりで洗練された意匠が特徴的な北欧のスクールチェアをリユースした。
物販什器には通常は農業倉庫や工場で使う業務用の木製パレットを活用。ホームセンターでも容易に手に入る資材を用い、メンテナンスや増設にもフレキシブルに対応できるデザインを心掛けた。
(設計協力、家具デザイン・製作 パートナースタッフ STUDIO KAMUNA一級建築士事務所 角田麻夫)
※農園スクール・カフェ・エコショップ「LEAF」:https://leaf-all-friendly.com/
※設計協力、家具設計/制作、写真:スタジオカムナ 角田麻夫:https://www.studiokamuna.com
※構造設計:D×E