循環する場の創造

環境建築から環境調和型集落へ

エコビレッジという考え方

人間は社会的動物と言われています。好むと好まざると集まって暮らすことが一つの特性なのです。集落、まち、都市とスケールは違っても、いくつかの家族が寄り添いながら暮らしています。かつては、その集落の中で助け合いながら相互扶助の関係を築き上げてきました。それがいまや環境との分断、社会との分断が大きくなり、集まって住んでいてもお互いの関係性はとても希薄になっています。

こうした状況において、一つの「住まい」が環境に配慮した環境建築にすることの意義は大きく、それがモデルとなって、他の人々もそうした住まいを手に入れたい、となることが理想です。

一つの住まいではできないことが、複数集まることで可能になることがあるのです。そうした住まい方の可能性を追求する取り組みが世界的に行われてきました。通称、「エコビレッジ」と言います。デンマークにある、エコビレッジの情報ネットワーク Global Ecovillage Network では、『エコビレッジとは、お互いが支え合う社会づくりと環境に負荷の少ない暮らし方を追い求める人々が作るコミュニティ』と位置付けています。

集まることで、排水、生ゴミの処理など循環の仕組みを備え、省エネなシステムを実現し、かつ農的暮らしと健全なコミュニティを複数の人たちと共同で実践していこうとする試みです。

里山長屋から里山集落へ

ビオフォルム環境デザイン室では、「里山長屋」というプロジェクトに関わり、2011年に完成しました。(事例集参照ください)神奈川県の山間地にあって、里山的な自然の恵に寄り添った暮らしと、隣人同士の健康的な関係性づくりの象徴としての長屋形式の4世帯の住居です。いわばミニミニエコビレッジと言えるものです。

なかなか地価が高い状況においては、欧米のように広い土地を手に入れて、そこに数十世帯が移り住むような開拓型のエコビレッジは、なかなか実現するにはハードルが高いものがあります。里山長屋のケースでは、計画した土地の大きさの制約から、4世帯の小規模なものでしたが、そうした暮らし方の考えに共感しつつ、里山的な暮らしをしたいご家族もその後徐々に周りに引っ越されてきて、(『森の家 1・2』)4戸がやがて6戸になりました。

小さいながらも面的な広がりが生まれ、エコビレッジ的な風景が整ってきたのです。こうして、点がつながり、線となり、面となるような発展型の住環境の整備の仕方も方法論としてはあり、なのだと思います。

循環型集落へ

私たちは、住宅を中心に設計活動をしてきました。特にこれまで述べてきたように、自然環境との循環、つながりを大事にした住まいです。そこで培われた技術と知見を、もっと面的に広げた場づくりに生かしてデザインを行っていこうとしています。

これまでも、小規模ながら、環境配慮型でコミュニティを育むプロジェクトを手掛けてきました。(『イルカビレッジ』、『鎌倉コーポラティブハウス』、『神山町集合住宅』など参照ください。)

現在も28ヘクタールの有機農業を目指す場づくりの設計が進んでいたり、環境配慮型で農的暮らしが可能な集合住宅のプロジェクトが進んでいます。(2020年11月現在)

住宅一つ一つでは限定的だったことが、集まることによって、その環境価値や技術が重なり合い、効果を高めあうことができます。

例えば、神山町の集合住宅のプロジェクトでは、木質ペレットを活用した、21住戸分の集中暖房給湯システムを採用しました。各十戸の排水も集めると、ちょっとした池を作ることも可能です。数や仕組みやそこでの活動が多様になる、とそれは生態系にあるような関係性をより豊かにデザインしていくことができるのです。

こうした事例は欧米ではたくさんの試みがされていますが、残念ながら、国内においてはまだまだ好事例は少ないようです。

私たちは、より俯瞰的な視野で、面的にも広がりのある循環型の場づくりをこれからも積極的に手掛けていこうと考えています。

ビジョンを構成するコンセプト

木の家 / 自然素材の家づくり
省エネで快適な暮らし
日本の伝統 / 地産地消の家づくり
コミュニケーションを生む場づくり
農的暮らしとパーマカルチャー
循環する場の創造
木の家 / 自然素材の家づくり
省エネで快適な暮らし
日本の伝統 / 地産地消の家づくり
コミュニケーションを生む場づくり
農的暮らしとパーマカルチャー
循環する場の創造