「三年鳴かず飛ばず」プロジェクト@世田谷区大蔵

東京都世田谷区大蔵地区。仙川と野川に挟まれ、国分寺崖線の緑地帯が広がる穏やかな場所で進む、新しい暮らしの場づくりのプロジェクトです。

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全景(マザーハウス、小屋、長屋)

大家さんが代々引き継いできた、地域の人々に親しまれてきた土地が、都市計画道路によって2つに分断されてしまったことをきっかけに始まりました。
まちの記憶を引き継ぎながら、新たな風景となる場所を目指すという大家さんのビジョンのもと、土地の記憶の継承、100年後の風景、子供が育つ場、持続的な経営方法まで含めて7年間伴走し、場づくりを形にしてきました。2023年6月にマザーハウスと石場建の小屋、2025年6月には長屋棟、2026年6月に小屋Bが竣工しました。
日々変化し続けるコミュニティや生態系、近隣住民の声など、その都度対話を重ねて計画を柔軟に更新。建築家が自律的に「つくった」のではなく、この土地の環境によって自ずと「できた」建築です。

長屋棟「巡る」は、子育て世代が暮らしの一部をシェアしながら、ほどよいつながりを育める場として構想された長屋形式の賃貸シェアハウスです。マザーハウスと連携し、子どもたちが心豊かに成⾧できる場所づくりを大事なテーマとしています。 https://bioform.jp/m-piece/ohkuranagaya

長屋棟「巡る」、小屋B

「マザーハウス」は、まちのお母さん的存在の方が住まい、1階のスペースは、まちの人や子どもたちが集える場所であり、キッチンや風呂は隣接する小屋の住民も使えるシェアスペースとして機能します。 
「小屋」は、今後の人口減少や都市農地の消失などの課題の中で、いかに生産緑地を守りながら小さな住まいを共存させるか、世代にあわせ将来の撤退や変更が可能で、かつ土地を傷めない構法でつくるかという試みです。
マザーハウス・小屋:https://bioform.jp/m-piece/motherhousu-koya
小屋B:https://bioform.jp/m-piece/m-piece-ohkurakoya2

マザーハウス、小屋、小屋B

プロジェクトのはじまり
もともとは大家さんの実家、賃貸アパートと畑があり、野菜販売をしたり正月祝いをしたりとまちの人が集う場所でしたが、都市計画道路施設により土地が二つに分断されることを発端にこのプロジェクトは始まりました。建物は解体され更地となりましたが、まちの人が集ったこの場所の記憶を未来につなぐ暮らしの場、ちょっとした集落をつくるプロジェクトとしてスタートしました。

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解体前の敷地(畑と賃貸アパート)
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餅つきの風景
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敷地を二分して貫通する都市計画道路

二分された敷地には、“100年後も残る風景”をコンセプトとした「長屋プロジェクト」と、“世代に合わせて変化する風景”をコンセプトとした「小屋プロジェクト」がスタートし、これからのまちの風景をつくっていくことを目指して設計が進みます。

「長屋プロジェクト」
長屋プロジェクトは、子育て世代向けの賃貸シェアハウスです。子育て世代が暮らしをシェアし、まちとのつながりをもつことで、いろいろな大人がいる豊かな環境で子どもたちが成長できる場所を目指します。建築は、1層目がコモンスペース、その上に長屋形式の住宅3世帯という構成です。各住戸は、玄関は分かれていますが、コモンスペースへ直接アクセスできるため、住民同士が距離感を保ちつつ、つながる暮らしができるように工夫しています。                                またコモンスペースは道路に面して大きく開かれ、まちに賑わいが溢れ出すように計画しています。屋根にある風塔は、3層分つながる階段室となっており、人の動線であると共に、光・風・熱が動く環境装置としても機能します。

長屋棟「巡る」

「小屋プロジェクト」
小屋プロジェクトは、「マザーハウス」と、「小屋型の賃貸住宅」と畑スペースで構成されます。
「マザーハウス」の2階にはまちのお母さん的存在の方が住まい、1階はまちの人や子どもたちが集う地域のコモンスペースとなります。また、キッチンや風呂は小屋側の住民も使えるシェアスペースとしても機能します。
「小屋型の賃貸住宅」は、「マザーハウス」や「長屋棟」の広いキッチンや風呂をシェアできることで機能を最小化。緑地を残して小さくつくることは、コストや環境負荷を抑えるだけでなく、相互扶助を育む暮らし方の再編にもつながります。目の前に広がる畑で野菜を育て、皆と共に食事ができ、狭小アパートと同じ部屋面積でも豊かな暮らしができるように計画しました。

マザーハウス、小屋、畑

小屋実作にあたり、その実寸モックアップを、墨付けから刻み、建て方までスタッフにてセルフビルドで作りながら、柱や梁の寸法やディテールを検証、調整し、実作に生かします。

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実寸モックアップ中

また、経年により将来の撤退や復元が容易に可能なように、移動可能で土地を傷めない構法を試行錯誤しました。その一つとして基礎は石場建てとしました。石場立ては、建物の基礎を石でつくる伝統的な構法で、大地をコンクリートで塞いでしまわないため、環境への負荷も少ない方法です。23年3月には、石場立ての地固めをヨイトマケにて行いました。100キロほどの重りを数え唄を歌いながら、みんなで引いて地固めしていく作業と、おいしいごはんを共にする風景は、建築をつくるということを改めて考えさせてくれる貴重な機会となりました。杢巧舎さんのご指導のもと、2日間で100人近い方々にご参加いただきました。※杢巧舎 http://mokkohsha.jp/

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「現代の結」の家づくり
小屋を建てるにあたり、全9回のワークショップ「住みかをつくる」として、専門家から地域住民まで数百名の参加者が交ざり合い、木・竹・土・石・水といった身近な自然素材を用いた伝統的構法による家づくりを体験しました。かつての日本の民家は、身近な素材と地域住民が助け合う「結(ゆい)」によってつくられ、その営みそのものが豊かな風景を形作ってきたといえます。自らの手で家をつくるプロセスは、私たちと環境のつながりを捉え直す豊かな経験ときっかけをもたらしてくれました。      「住みかを作る 自然とつながる家づくりの学校」https://bioform.jp/project/sumikawotukuru

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写真:真島一樹(日本デザインセンター)※一部弊社スタッフ